横浜市立のある小学校で約3ヶ月間に渡り、タブレットも用いながら、感情的知性・心の知性と呼ばれるEI教育(Emotional Intelligence教育)をさせて頂き、子ども達のヒアリングインタビューをした結果を、こちらでもレポートしたいと思います。(学校からも許可をもらい掲載しています)
心の知性(感情的知性)教育の中でも、日本人が特に弱い「自分と向き合い、自分を大切にする力」に特化して行いました(この部分は、感情教育が進んでいる英国などでも基礎として大切にされています)。
2回(3コマ)の授業と、そこで学んだ内容をベースに、タブレットに毎日30秒~1分自分の気持ちとうまく付き合えるようになるためのちょっとしたEIエクササイズ(Emotional Intelligence Excercise)を続けてもらいました。
授業後は2回程、子ども達のインタビューに行かせて頂いたのですが、EIスキルを学んで手に入れた、子どもたちには、多くの肯定的な変化が見られました。
その中でも、一番多かった1つ目の変化は
子ども達が、感情をメタ認知(メタムード)できるようになった
ということです。
ポジティブだけでなく、ネガティブにみえる気持ちもしっかり受け止めながら、それに合わせた行動を取ることができるようになっていました。いくつかの声を紹介してみると
「毎朝自分の気持ちを認識することで、今日は(心の)調子がよくないから、無理せずにゆっくり過ごそうかな、と考えることができるようになった」
「自分の中にいる、色々な気持ちの国民同士(色々な気持ちの自分を、色々な気持ちの国民とメタファーに置き換えて習っています)を対話させることで、自分の中を落ち着かせることができるようになった」
「自分の中にも、自分の味方を見つけることができるようになった」
というもの。
ネガティブな気持ちを無視したり押さえ込んでいると、ストレスが蓄積し、心身の不安定感が増して、感情に飲み込まれやすくなる事は、大人でもよくやってしまうことです。
これは、心の知性(EI)をスキルとして学んでいない場合、そうなりやすいわけですが
今回の学習を通して、子ども達はネガティブな感情を無視したり飲み込まれること無く、受け止め落ち着かせ、感情をうまく扱うことができるようになってきていました。
その結果、次に多かったのが
自己嫌悪や落ち込みが減少したり短くなった!
という声です。
以前は、何かうまくいかなかった時に、自分がダメだなと思えてきて、なかなか立ち直れなかった・・という子が多かったのですが(大人でもありますよね)
ネガティブな気持ちを受け入れて、「人間だしそういう気持ちもあるよなあ・・」「それが変なことでもないし、そういう時があっても当たり前、大丈夫」と思える事で、早く立ち直る事ができるようになった!という子が増えていて、うれしかったです。
また、このようにして自分自身への寛容さが生まれた結果
「周りへの寛容さが生まれるようになった」
のも大きな変化の一つでした。(^^)
小学生でもここまで数か月で変わるのか!とびっくりしたのが、ものの見方や感じ方で
「嫌な事をいわれた時とか、相手の機嫌が悪い時に、まあ人間だからそういう気分の時もあるか・・と思えるようになった」
「兄弟が当たり散らしてくる時に、(習い事や学校で)悔しかったり悲しかったりするこがあって、そういう態度に出てるのかな?と思って、攻撃的にならず見守るようになった」
と話してくれた子ども達。
「今回学んだ内容を知らなかった以前は、相手に(感情的に)反応してしまっていた」という子が多かったのですが、EIスキルを学んで身に着けた後は
兄弟や友達、親や先生に対して、攻撃的な態度をとるのではなく
「自分と彼らの中に同じ国民がいるようだ(人間として同じような気持ちがあるんだな)」
と認識したり、少し引いて見守ることができるようになった子が増えていました。
実はこれは、先生たちから見ても「そう見える」という声があり
「クラスの中で、相手を責めるような声掛けが減っているように感じます。以前なら責めていたところを、大丈夫、とか前向きな言葉が増えてきている印象です」
というフィードバックを頂きました。これは以前、別の小学校でも担任の先生が同じような印象を持って語ってくれたことと同じでした。
また、先生がイライラしていると
「それだけ真剣に考えてるからだよね」
「そういう気分の時もあるよね」
と児童がやさしい声をかけてくれたりするようになった
という別の先生からの声もありました。
「人間だし、気分がいい時もわるい時もあるんだなあ」と自分をメタ認知できれば、他人に対しても、自然とそう見ることができるようになってくる。
そういう意味では、逆方向も同じで、ひとりひとりの心の中がすさんでいると、いじめが多くなります。
人間はモヤモヤしたりイライラしていると人にやさしく出来ません。これは学校でも育児でも仕事でも同じです。
自分がいい状態のほうが、人にやさしくできます。
そういう意味では、人間関係をよくしていく際に、とにかく他人にやさしくしなさいと叱るのではなく
心がすさまないように、自分の心を穏やかに落ち着かせられるスキルを、ひとりひとりが習得すること(大人も子どもも)。
が実はとても重要なのです。
さらに、グループインタビューでは、
「小さい事でも、自分はがんばっているんだ!と捉えられるようになった」
「自分が自分のがんばりをみとめられるようになったので、(周りがなんていうかはおいておいて)失敗してもいいから、チャレンジしてみることができるようになった」
と言ってくれた児童も多く、自分に大らかになったことで、諦めずにチャレンジできるようになったという子も増えて、非常にうれしい気持ちになりました。^^
まとめると、今回、心の知性(感情的知性)を学ぶEmotional Intelligence教育で、自分の気持ちを尊重し、自分自身を大切にするスキルを学んで、身に着けた子ども達は
①自他に寛容になり(共感や協調性)
②より早く立ち直れるようになり(レジリエンス、やり抜く力)
③諦めず、挑戦する気持ち(主体性・意欲)
という力を、100日ほどで手に入れることができていました。
これは大人になっても、より楽しく豊かな人生をつくりだすために、必要なスキルです。
「これさえあれば、あとは人生どうにかしていける!」というほど、強力な重要スキルかもしれません。
自分と向き合い大切にするEIスキルの獲得は、心の安定や成長に大きな影響を与えます。
このEIスキルを身に着けるかどうかは、人生の幸福度や、自己肯定感・自尊心の大きな差につながります。(結果として、収入にも差が出ることが分かっています)
今回は、EIスキルの中でも、特に日本において抜け落ちているパートに特化した内容を行いました。
海外の感情教育(ELやSEL等)をそのまま全部やろうとすると膨大な量ですし、文化の違いもあって、そのままとりいれずらい面もあり、ハードルが高くなりすぎる部分があるからです。
今回のように、日本人が(学んでないことで)抜け落ちているEIスキルに短時間で特化して行うだけでも、ずいぶん違います。
コロナもあり、ここ数年で、全国の学校にタブレットが配布され、今回はタブレットの力を借りる事で、最小限の人的リソースで習慣化することができました。
日本の先生達は本当に多忙ですので、定着化や習慣化のためには、タブレットやAIをうまく使えば、より柔軟なアプローチが可能となるのではないでしょうか?
全部人間が教えようと気張って100か0かで考えるのではなく、まずはできるところから、日本人が特に身に着けるとよさそうなEIスキルを、AI×EIをうまく使いながら育んでいけたらベストではないかと思います。
とはいえ・・このようなEI教育活動は、学校にそのような予算がない事情もあり、私がボランティアベースで行ってきており(交通費もでないこともあり)、子ども向けの活動はもう4年目になりますが、今後の継続は困難な状態です。
また、日本では、大人達もこういうスキルを学校などで学んだことがないため、大人が子ども達にうまくステップを踏んで教えていくことができない、という難しさもあります。
心の知性も、外国語も、算数もスキルです。
学んだ人から、できるようになっていきます。
ニコニコ生きる人を増やすには「子どもにだけ学んでもらおう」ではなく
「まず大人達が」そのスキルを学ぶ必要があります。
そうでないと子ども達に教える人が増えませんし、EIスキルを理解していない大人たちは、無意識に根性論や精神論で子どもをつぶしてしまう可能性があるからです。
日本では、まだまだ学校で学ぶのは難しい状態がつづくでしょうから、まずは、そういうスキルを学び使いこなす大人達が増えることが、とても重要。
その大人達が、家庭や職場や学校など、さまざまな形で周りにつたえていければ、のびのびしたあたたかな社会になり、笑顔あふれる日本の未来へつながります。
そのために、日本人の精神性にあわせた形でEmotional Intelligenceを楽しく学び、伝える大人をひとりでも増やしていこうというプロジェクトに共感下さったり、大人向けにそれを教えにきてほしいという方がいましたら(PTA、学校、塾、企業、組織など)、ぜひ気軽にご相談、お声がけいただければうれしいです。相談はこちらから
心ある大人達から周りへ、そしてそこから日本全体へ。
共に心の知性やEIスキルを一緒に広げて、笑顔の花がさきほこる日本の未来をつくっていく大人がもっと増えたらうれしいなと思っています。^^
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